サカナの靴を履いた人魚

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俺が人魚伝説について調べ、その存在を追い求める理由は色々あるが……まあ、一つはいわゆるルーツ探しってヤツだ。 俺の母親は、島でたった一人の人魚だった。 だから、他の人魚は一体どこにいるのか、自分たちは一体どういう存在なのか……それを調べるために母は人間に化けて陸に上がり、島に伝わる人魚伝説について調べ始めた。 そして……その研究の果てに [人魚]という種族はやがて滅びゆく存在であることを知り、母は研究をやめた。 だが、あいにく俺は母のように諦めの良い性格ではない。 物心ついた時にその研究を引き継ぎ、陸に上がって勉学に励んだ。 俺には、人間と同じように地べたを歩く為の足がある。 長ズボンに長靴下、ブーツを履いて、あとはマフラーを巻いてうなじを隠せば、外見は人間と変わらないからな。 ちなみに、父親については何も教えてはもらえなかった。 俺が物心つくころにはすでに、老衰で死んでいたらしい。 人間と人魚は寿命が違うらしく ガキのころからつるんでいた人間の幼なじみたちは、50年も前に全員ジジババになって、老衰でコロリと逝ってしまった。 そして、俺は人間とも人魚とも寿命が違うらしく、30年以上前に母の外見年齢を追い越してしまい…… 故郷には、もはや自分の居場所が無いコトを悟って俺は島を出た。 ……まあ 俺は別に[居場所]なんて求めているワケじゃない。 俺が求めているのは あくまで[伝説の真実] 今から一万年以上前に滅び海底へ と沈んだとされる古代都市 [アトランティス] 古代アレキサンド神話における人類発祥の一節 [三種の人類]について そして、ネプチューン王国の神話に出てくる[海の民]とは…… その真実は全て、目の前にいる、この少女が知っているはずだ!
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