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と、熱く語ると、人魚は苦笑して
『私は、お前が期待している程
多くを知っているわけではない。
だが……お前の言う、海底都市アトランティスとやらには案内してやってもいい』
――本当かッ!?
と、思わず口に出すと、声の代わりにゴボッと空気が漏れた。
『ああ、本当だ。
しかし……お前が担いでいる、その人間の女はなんだ?』
あ……メノウのコトをすっかり忘れていた。
…つーか、生きてるかなコイツ。
つい、人魚と長話してしまったのだが……
『海底都市は、水深100メートルもの海底にある。 人間にはとても耐えられないだろう』
水深100メートル……
『いい加減に、海からあがらないとな……』
……悔しいが、今はひとまず船に戻らなければいけない。
『私の名は×××だ』
と、彼女は名乗った。
(…人魚語の響きは人間には発音できないため、彼女の名をこの手記に記すことは残念ながら不可能だ)
『私は、満月の晩によく陸に上がって月光浴をしている。 機会があればまた会おう、ギルバート』
人魚はそう言うと、何度か俺の方をふり返り、海の底へと深く潜っていく。
……本当は、彼女について行き海底都市を一目見てみたかった。
しかし、今更メノウを見捨てる訳にもいかないし……それに、俺には水深100メートルもの深海まで泳いでいくコトは出来ない。
俺は、父親の血を濃く受け継いだらしく、エラはあってもエラ呼吸することは出来ず、人間と同じく肺呼吸をして海に潜る。
まあ、二時間に一度ほど息継ぎをすれば酸素は足りるので、普通の人よりは長く潜っていられるが……それでも、水圧の問題がある。
俺の体は深海の水圧に耐えられるような作りをしておらず、せいぜい水深10メートル潜るのが限度だ
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