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そりゃ、あんな出血していたら意識が無くなるのも当然だろう。 普通の人は死ぬレベルだ。
「でもね……
あの時わたし、確かに見たの!
海の底に沈んでいたわたしを、人魚さんが助けてくれたの!」
……やべッ!!
ま、まさかコイツ……あの時意識があったのか!?
「い…意識がもうろうとしてて、幻覚でも見たんじゃないのか? 俺が助けにきた時はそんなの居なかったぞ」
と、俺は目を逸らしつつとりあえずしらばっくれてみる。
「あら……そうかしら?
けど、わたしは見たのよ。
たとえ、それが幻覚だったとしても……子どもの頃、一緒に遊んだ人魚の友だちが、わたしを抱えて助けてくれたの。
顔はよく見えなかったけど……人魚さんの、真っ赤なサカナの靴ははっきりと見えたわ。
まるで金魚をそのまま大きくしたような、ひらひらとした真っ赤な尾鰭は見間違いようがない……」
……真っ赤な、サカナの靴……
「それにね! わたし、もう一人の人魚さんも見たのよ。
女の子の人魚でね……青い鱗に包まれたサカナの下半身で、まるで絵本の人魚姫みたいな姿だったわ」
青い鱗……あの人魚のコトか……
「ま、まあ……人間、死にかけるとそういう幻覚を見るコトがあるっていうしな。
俺の知り合いにもいたよ。 死にかけて天使様を見たとか、死んだばあちゃんがお花畑の向こうで手招きしていたとか……」
幻覚、幻覚!
と、俺はメノウに言い聞かせる。
ここはひとまず話題を変えよう!
「人魚といえば……メノウ、お前が子どもの頃一緒に遊んでいたっていう『人魚のトモダチ』って、どんなヤツだったんだ?」
と、尋ねてみる。 前から聞いてみたいとは思っていたのだが、なんとなく聞きそびれていたのだ。
「そうね……
あの子と出会ったのはずいぶん昔……わたしが子どもの頃の話よ。
わたしがサザナミ村っていう、海辺の村の生まれだって話は前に言ったわよね?」
そう言ってメノウは話し始めた…
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