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「わたし、子どもの頃はいつも村外れの入江で独りで遊んでたのよ
だけど、ある日入江で人魚さんに出会ったの
海の中で真っ赤な尾鰭が見えたから、最初は大きな金魚かと思ったわ!
サザナミ村の海で暮らす魚は、みんな黒や茶色ばかりで、こんなに鮮やかな赤色の魚なんて、初めてだったから
つい、手を伸ばしてその綺麗な鱗を一枚剥がしちゃったの。
そうしたら『痛い!』って、海の中から腕が伸びてきて、わたしの頭をひっぱたいたのよ」
メノウは、その時のコトを思い出したのか、懐かしげな顔をしてクスクスと笑う。
「あの子は、小さな島国の海に住んでいる人魚だったの。 人間について詳しく調べるために私の村までやってきて、こっそり海から覗いていたんだって
だから、わたしが色んなコトをあの子に教えてあげたわ。
人間のコトや、村の生活のコト
サザナミ村のわらべうたを歌ってあげた……」
サザナミの歌、か……
「その代わりに、あの子はわたしに泳ぎを教えてくれたわ。
ただ……あの子の教え方がちょっとスパルタすぎて、ちょっとわたしは上達しなかったんだけどね……
あの子ったら
『ニンゲンは何十分くらい潜っていられるの?』だなんて言うんだもの!『十分くらい潜っていられるように、鍛えてあげるよ』
って、いきなりわたしの足をつかんで海の底に沈められたときは、さすがに死ぬかと思ったわ……」
……友だちっていうか
それイジメられていたんじゃね?
もしかして、メノウがカナヅチな原因ってその人魚のせいなんじゃ……
「あの子は西の島国の海で、お母さんと二人で暮らしているって言っていたわ。
でも、西の島国では人魚はその子とお母さんしか居ないんですって
それで、大人になったら人魚の仲間を探すための旅に出るんだって、いつも言っていたの」
……サザナミ村から西の島国っていうと……もしや、セイロン列島か?
いや、あそこは俺とお袋しか人魚は居なかったハズだし……
まあ、あの辺りは小さな島が幾つもあったから、そこに人魚の親子が隠れ住んでいたとしてもおかしくはないか……
なんだ。 案外、近所に人魚の同胞がいたんだな。
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