宝石の海と人魚

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「なんだ? そいつで、俺を脅すつもりか?」 ダンサーのような細長い筋肉は、突くことに特化した武器を扱うのに相性がいい。 なかなか力も強そうだし、槍術の心得でもあるのかもしれない。 まあ、まともにやり合えば女ごときに負ける気はしないが、無闇に刃傷沙汰を起こしたくないし…… ところが、女は槍の穂先にぐるぐると布を巻いて床に置いた。 「待って……わたしはただ、友だちに会いに来ただけなの」 そう言って、女は身の上話しを始めた。 彼女が幼い頃、一緒に遊んでいた友人がいたらしい。 しかし ある日その友人とやらは、この槍を置いて彼女の前から姿を消してしまった。 月日は流れ、彼女は産まれ育った村を出て、旅の踊り子をしながら、この槍を友人に返すためにネプチューンに向かっているのだという。 「……で?」 いまいち要領のつかめない上、どーでもいい彼女の身の上話を聞き流し、俺はジト目で睨みつける。 「えっと…… 旅の途中で親切なお金持ちのひとが、船で乗せてってくれるって言ってくれたんだけど…… <ピー>とか<プー>しようとするから、逃げ出してきてここに隠れてたの」 俺は、自分の推測が当たっていたことに満足しながらも相づちをうつ。 「…<ピー>くらい、ヤラせてやればいいじゃん…」 「ダメよそんなの! わたし、死んだダンナさんに操を捧げているんだから!」 と、女はサラリと衝撃発言をする つーか、まさかの未亡人? 「まあ、とにかくそういう訳なのよ。 分かってくれた?」 「……とりあえず、あんたが未亡人なのは分かったけど…無賃乗船したあげく、ヒトの部屋でまったりしていい理由にはならないな。 やっぱ乗務員に突き出して……」 「待って待って待って~ッ!」 女は俺の足にガシッとしがみついて、行く手を阻む。 …ったく、仕方ねぇな…… もうしばらく、女の話に付き合ってやる。
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