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「……で、その友だちとやらはネプチューンに住んでいるのか?」
すると、女は少し不安げな顔をしてぽつりと呟いた。
「わからないの……でも
あの子はきっと仲間を求めて
この[宝石の海]にやって来ているハズ……」
「……宝石の海?」
俺は尋ねた。
まさかとは思うがこの女…
「ネプチューン列島じゃなくて
海の中にお前の友だちはいる…とでも言うのか?」
すると、女は大正解!とでも言うように、ぱあっと笑顔を浮かべてこう言った。
「そうよ。
わたしの友達は人魚さんなの!」
………。
「バカかお前」
女のぶっ飛んだセリフに、とりあえずツッコミをいれた。
「人魚って……お前、いい年してそんなお伽話を信じているのか?」
すると女は、子どものようにむきになって
「信じるとか、信じないとかじゃなくて人魚はいるのッ!!
子どもの頃の話だけど、わたし本当に人魚と友だちだったのよ?
あんまり昔だから、もう名前も思い出せないけれど……
あの子の、まるで金魚をそのまま大きくしたような、ひらひらとした真っ赤な尾ひれは今でもはっきり覚えているわ」
赤い尾ひれの人魚、ねぇ……
「わたしと同じ年ごろで、髪は灰色が混じった深い青色……わたしの故郷の海と同じ色をしていた。 とても、きれいな子だった……
でも、下は真っ赤な鱗のサカナの靴……何度も触って確かめてみたもの!」
……少し考えて、俺は言った
「つまりあんたは、本当に人魚はいるって信じているワケ?
で、人魚に会うために旅をしている、と」
「ええ、そうよ」
女は即答した。
「………。
仕方ないな……
分かったよ。
しばらくの間匿ってやる」
渋々と承諾すると、女はぱあっと花が咲いたような笑顔を浮かべた
「本当に!? ありがとうっ!
あ……でも
どうして急にわたしのコト匿ってくれる気になったの?」
と、彼女は小首を傾げる。
さすがに、俺の変わり身が早すぎて疑問にもたれたようだ。
……ついさっき、バカバカ言っていた相手にこう言うのはナンだけど……まあ、仕方ないか。
俺は、誰にも言うなよ、と釘を差してこう言った。
「…まあ、なんつーか実を言うと
俺も探しているんだよ
その[人魚]ってヤツをさ」
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