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◆◆◆
ここは、物置部屋兼、俺の客室。
当然、窓もなく光が全く差さないこの部屋では、火を灯した一本の蝋燭だけがたよりだ。
暗くて小さな部屋の中、俺と女は二人きりで、ゆらゆらと揺らぐ蝋燭の小さな灯りを眺めていた。
「……そう言えば、あなた
名前はなんていうの?」
ふと、女が尋ねる。
その言葉で、俺も彼女の名前を知らないコトに気がついた。
俺の名は、ギルバート。
かの有名な冒険家
[ギルバート・アンダーソン]
にちなんで母につけられた名だ。
母はアンダーソン氏の大ファンで、俺自身も子供の頃から彼のような冒険家になることを夢見ていた。
まあ……昔の話だけどな。
今の俺は、遺跡の盗掘を生業とするドロボーに過ぎない。
「まあ、俺のコトは
[ギル]とでも呼んでくれ。
お前は?」
「わたしは[メノウ]っていうの」
メノウ……古い記憶の隅に引っ掛かる、聞き覚えのある名前だった。 たしか、東洋では[瑪瑙]とかいう宝石があったっけ。 するとやはり、この女東洋の出身か。
「ねぇ、ギル…あなたはどうして人魚を探しているの?」
と、メノウは尋ねる。
「そうだな。
話すと長くなるけど…」
と、前置きして俺は語り始めた。
「まあ、一つはいわゆるルーツ探しってヤツだ。
俺の産まれもネプチューンみたいな小さな島国で、人魚伝説も盛んな土地柄だったんだ。
俺の母は、若い頃からそういうのが好きでさ。 独学で考古学や民俗学を勉強して、人魚伝説の研究をしていて……
………。
まあ、色々あって
結局お袋は人魚の研究を止めちまったんだけどさぁ
俺もその影響受けて、お袋の
[人魚伝説]の研究を受け継いだってワケだ」
「へぇ~。
じゃあ、ギルって学者さんだったのね。 何だか、チンピラみたいな格好をしているから意外だわ!」
………。
ガラ悪いのは自覚してるけどさぁ……この、いかにも頭の弱そうな女に言われるのは超心外。
「ね。その研究って、例えばどんなことが分かったの?」
と、メノウは尋ねてくる。
それじゃあ、ちょっとだけ語ってやろうか。
(※次のページは今後一切物語に絡んでこない設定なので読み飛ばしても大丈夫です)
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