宝石の海と人魚

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《30分経過》 「……そして俺は[人魚伝説]について更に深く調べるため、このネプチューン王国へやってきたってわけだ! まあ、詳しく説明すると長くなるからこの辺で……って」 「………。 ぐ~…す~…ぴ~…」 「……おいっ、寝るなよ!!」 すやすやと眠りこけるメノウの脳天に、俺はべしっとツッコミを入れた。 「ふぁぁ……、ごめんなさい。 ギルの話って、なんだかめんどくさ……じゃなくて! わたしには難しくってつい……」 まったく……まあ、こいつには考古学的な話なんて退屈なモノなんだろう。 ◆◆◆ 夕方になり、夕食の時間。 「……おナカすいた…」 と、お腹を鳴らしてじーっとこちらを見つめるメノウを無視して、俺は上の階にある食堂に向かった 食堂には、すでに他の乗客たちが集まっている。 なんつーか、プチ豪華客船の乗客なだけあって、金持ちそうな老夫婦や小さな子どもを連れた若い夫婦……みんな小金持ちそうな雰囲気だ。 なんか、俺一人だけやけに場違いだよな…… と、思いきや……もう一人いた。 なんか、チンピラみたいで人相の悪いヤツが。 「よお、兄ちゃん。 あんた一人かい?」 と、そのチンピラ風の男が俺に向かって話し掛けてくる。 年頃は30半ばくらい。 筋肉質で、顔やら腕やらに幾つもの傷がついている。 モスグリーンの袖無しシャツにはじんわり汗が滲み、頑丈なデニム生地で織られたズボンはあちこち破れている。 たくましい腕には模様の入った黄色いスカーフを巻いて、さり気なくお洒落を演出していた。 あのスカーフの模様パターンは……東マルティーグ地方の田舎によくある織物だな。 潮で傷んだ髪に、日に焼けた肌、顔立ちはガリア系……この辺りの生まれじゃなさそうだ。 そして、間違いなくカタギの人間ではない。 少なくとも、こんな所に観光目的で来るようなタイプではないコトはたしかだ。 「あー……俺、こう見えても一応学者でさ、ネプチューンの人魚伝説について調べているんだよ。 そういうあんたこそ、一人で観光か?」 「いや、まあ……向こうのツレと待ち合わせをしていてな……」
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