その男、衛兵につき

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 ここは魔法が存在し、剣が振るわれている世界。  獲物を探して鳥が空を舞い、恐ろしい獣が森を闊歩し、強大な竜が山に住まうという。  そんな話も今は昔。  平穏を迎えたこの時代では魔物も人々の糧に、或いは冒険者や狩人の飯の種に変わっていた。  そして、とある街の酒場の隅の席で昼間から爆睡している男が一人。 「ぐー………ぐぅー………」  ぼさぼさの茶髪。ワインレッドを基調とした、何処かの制服らしきものをマントのように羽織っている青年だ。  こいつがこの物語の主人公、アディスト=ディラグ。これでもこの街の衛兵の一人である。  とすれば羽織っているのは団員用の制服で、よくよく見てみれば左肩辺りの部分に剣を象った徽章(きしょう)が付いていた。  そんな人間が昼間からこんな場所で寝ていて、周りは何もしないのかと言えば……
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