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本当はいつか、こんな日がくるんじゃないかと思っていた。
「嘘だろ……」
アルバイトを終えてアパートに帰ってきた建(たつる)は、狭い台所の上に置いてあった走り書きを見つめて呆然と立ち尽くしている。
築二十年は経つ、古いアパートだ。
父親が亡くなり、母親と二人で住むようになってから五年暮らした部屋だった。
紙切れの文字を一文字一文字たどる様にもう一度読む。
『建、ごめんね』
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