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本当の名前をわたしは知っていたけれど、周りがあだ名で呼んでいる中、源先生だなんて恥ずかしくて呼べるはずもなかった。
義経は、いつも古語辞典を持ち歩いていた。
紙辞書の、古臭いやつだ。
電子辞書にすればいいのにと思っていたのだが、義経はいつも慣れた手つきで辞書を引いた。
好きになってからは、その素早い動作すらも魅力的に感じていた。
そして当時の、恋に浮かれた馬鹿なわたしは何を思ったのか、それと同じものを新品で買った。
高校三年の冬だった。
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