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とっさに拾おうとすると、既に背広姿の男性が拾ってくれていた。
「あ、すみません……ありがとうございます」
こんな都会なのに。
良い人はどこにでもいるものだな、と思いながら顔も見ずに辞書を受け取る。
そして軽く会釈して、顔を上げた。
「よしつね」
口をついて出た単語。
人違いかもしれないのに、考える前に口に出ていた。
あまりにも義経……いや、好きだった人に似ていたからだ。
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