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ちょっと笑ってしまったが、確かに俺はそう思った。
「ここに、居ていいのか迷った」
これからも、多分怪我をする。その度に、泣かれたら堪らない。
「頼りにされないから泣く。だから、もっと頼りにして…」
俺の頭を撫ぜる御形の手が優しい。俺は、安心して眠りについてしまった。多分、俺は、帰りたいと初めて思った。今まで、俺は、無理してまで、帰ろうなんて思った事は無かった。怪我をすれば、その場で、動けるようになるまで寝ころんで空を見ていた、ダメだったら死ぬだけだと、さばさばして考えていた。
初めての、多分これが帰れる家なのだ。
第六章 おまけ
御形と同居しているのは、公認の秘密になってしまった。
御形の家が寺なので、俺は祟りの人形と同じく供養されるために同居だとか、寺に封印されているとか、悪い噂にまた尾ひれがついている状態だった。
中には、御形とコンビになって悪霊退治のチームを作っている、なんてものもあった。しかも、真剣に依頼までしてくる。
「本当のところどうなの?」
荒川、鋭く聞いてくる。
「霊能力者の生活は人間としてダメだと、更生施設に入れられたみたいなものだ」
全然、的を得ない回答だというのに、荒川がうなずいていた。
「まあ、あの御形が黒井に対しては、いつも真剣だってことが、気になるのだろうな、俺も含めて皆さんね」
俺も、皆さんと同じく、その点は気になる。俺のどこが良いのか、さっぱり分からない。声に出してそう言っていたのか、荒川が目を丸くした。
「気付かなかったのか?今まで?黒井、学校のアイドルの一人だぞ。大衆は怖くて近寄らないけど、俺なんて、黒井との会話は常に盗聴されている気分を味わっている」
俺がアイドル?全く知らない。
「あ、本当に気が付いていなかったのか…」
荒川がげんなりと、疲れたような溜息をついた。
「本当、御形といいコンビだ…」
了
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