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連も、協力して強化対策してくれているが、何分初めての経験で自信はない。
「あら、典史ちゃん、来ていたの!」
庭に出た御形の母に見つかってしまった。
「あらこちらのお友達は、もしかして春日さんのところの末っ子ね」
親同士というのは、案外繋がっているらしい。
「レストラン、時々行くのよ。野菜のお料理が参考になるのよ!」
肩をばしばし叩かれながら、蓮もおとなしく笑顔を振りまいている。このお母さんの弟は、どれだ?そっと、庭を覗くが気配はなかった。
「夕食、食べていってね!」
逃げようとしているのが察知されているのか、俺はしっかりと腕を掴まれていた。にこにこしているが、やや強引、御形の母親だった。
「志信!典史ちゃん来ているのよ」
御形と、一穂が玄関にやってきた。御形、俺よりも蓮を凝視していた。一穂は、目の下に隈を作りつつも、笑顔で抱き着いてきた。
「典史兄ちゃん!」
そこにもう一人、のっそりと現れた男が居た。これが、台風か。
日焼けした肌に、白い歯が光る、御形が年を取ったようなイメージもあった。
「おっ何だこれ?人形みたいだな」
突然、両脇を手で支えられると、子供のように高い高いされていた。
「軽いな」
床に降ろされることなく、片手で肩に乗せられる。
「男か?女か?」
楽しそうに笑いながら、ズボンに手を入れられそうになって、慌てて肩から飛び降りると、玄関の外に飛びのいた。台風だ、何だか分からない内に巻き込まれてしまう。俺が睨みつけていると、楽しそうに笑っていた。
「男か、しかし綺麗な姿と魂だ。天女に近いかな」
男が蓮に向き直ると、蓮は急いで玄関から外へと飛び出していた。
「一之進君、子供が嫌がるからおとなしく奥へ行ってください」
御形の母親が諌めると、肩を竦めて奥へと入って行った。
マイペースだ、悪意が無い分、厄介な人だ。しかも、
「一之進さん、鬼憑きですね」
連が、呟いていた。
「鬼憑き、別名、神様憑きとも言っていますが、神様は祓えないですね。世界の危機に何となく関わって、ちょっとだけ手を貸す存在です」
連の説明に、何となくうなずく。俺も、こういうタイプに遭遇したことがあるが、やたらパワーがあり、悪気はないが周囲を巻き込む。俺は、見つけたらひたすら遠くに逃げることにしている。
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