第1章

11/38

202人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 所有物?何を言っているのだ。 「帰る!」  ハンガーの服を取ると、さっさと着込む。ここに長居は無用だ。 「…かわいい反応していたよ、動画見る」  御形の携帯に流れる、俺の画像。キスマーク付けて眠っているだけなのだが、裸、全裸だった。 「写真もあるよ」  脅しかこれは? 「キスマーク付ける端から、完治していく画像なんてトリックみたいだよね。治癒能力、ハンパない」  やはり、脅しか。 「だから、消えないように、呪印を付けてみたんだ。でも、呪印でさえ、その治癒能力ならば、そのうち消えるかもしれないけど、その場所は俺と黒井以外が触れるとやけどする」  御形の表情が、暗い。 「呪印、解いて欲しかったら、言う事を聞いて」  御形が苦しそうに呟く。脅されていて何だけど、御形、本当は脅したくないのではないか?なのに脅す、その理由が知りたかった。 「俺に、何して欲しい?」 「見て欲しいものがある」  身支度を整えて、御形に案内されたのは蔵だった。 「くどいようだけど、呪印の跡はすぐに消えると思うけど、効果は持続しているからね。浮気は出来ないよ」  蔵の電気を点けると、棚に並んだ人形、おもちゃ、衣類、鞄。名札を付けられて並んでいた。 「祟りの品。弔って欲しいとか供養してくれとか、色々な理由で置いていかれた、家族はこんなんが大量にあるから、一穂は祟りを受けたのかと思った」  一穂は祟りではない。蔵の中に入り込むと、 ミシミシと足音が鳴った。かなり古い造りの蔵のようだった。奥には、短刀やら刀も置かれていた。 「俺の所見でも、ここにある九十九%は持ち主の思い込みだけだ」  祟られる理由があれば、人間は頭で関連付けてしまい、幾らでも理由が出来てしまう。でも、頭の錯覚ならば、物を無くせば祟りは無くなると信じ込ませれば良いだけだ。  これが、俺を自称詐欺師と呼ばせる理由だ。霊障が思い込みならば、頭と頭の勝負になる。  奥の一角に、鞠が大量に置かれていた。赤い鞠。手鞠だったり、柄の入ったビニール製だったり。どれも、中に鈴が入っているようで、手に取るとリンリンと音が鳴った。 「俺に、霊感が無いことは気付いているよな」 「ああ」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加