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この鞠が、同じ場所に置かれているということは、同じ霊障だと判別されているせいだろう。しかし、かなり古いものから、最近のものまである。そして、種類も多数に跨る。長い期間、色々な人が遭遇し、何かがあったということだ。
水を媒介にして、物の過去も見ることは可能だが、これは過去が問題なのではない。土地、その場に何かある。過去を見るなら、その場の過去を見るしかない。
「この鞠は供養の品だよな。この鞠自体には何もないのと違うか?」
「そうだ。やっぱり気になるか?俺もそれは気になる。親父も気にしている」
正解だと言わんばかりに、御形が笑う。御形は、俺には余り見せないが、学校では垂れ流しになっている爽やかな笑顔をしていた。俺は、どれに興味を示すか試されていたのだろうか。それはかなり腹が立つ。
「問題あるかないかは、形にしてみると分かる。俺は見えないから、ここで実体化するか?」
分かっている、これは意地悪だ。ここで実体化した場合、ここにある無数の物が、倍以上に膨らんだ形で、蔵の中に現れる。しかも、動き回る。
「勘弁してください」
こうして爽やかにしていれば、御形が学校のアイドル的な存在なのだと分かる。俺とは対照的な存在だ。
「よし、対象は決まった。朝飯にしよう」
もしかして御形は、俺には見えないものを見ている、聞いている。祖母も母も、闇から聞こえてくるような、人の思いは、聞き続けるとあまりにも重いと言っていた。修業していないと、精神を病んでしまう。
御形、一人で抱えているのではないか。でも、偽霊能力者の俺には、どうすることもできない。
御形家の朝食は、慌ただしい。法事が何々がと、ドタバタと走り回っている。その間に、電話が何回も鳴った。
「邪魔だよな、俺」
ごはんに味噌汁の朝食。甘くダシの効いた厚焼き玉子、シャケの焼き魚。
「いやいや、いつもの朝だから」
御形は、のんびりとテーブルに座っている。親を手伝うという気持ちは、微塵もないようだった。
「で、次の三連休。空けて。鞠の場所に案内するから」
「志信、鞠の件、解決してくれるなら旅費はこっちが持つぞ」
御形の父親、袈裟を着て数珠を手にしていた。動き回っているが、会話は聞いているらしい。
「親父、助かる」
御形、味噌汁を飲みながら礼を言う。
「俺、バイト三昧だけど」
金の他にも、俺には祖母と母に借りがあるのだ。
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