第1章

18/38

202人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 目が覚めると、俺はベッドに寝ていた。恭輔は家に帰ったようだ。御形は、床に寝ていた。 第三章 手鞠歌の少女  三連休には、鞠の場所に行く。何日も前から御形が、準備をしたのか?着替えは持ったか?などと騒ぎ出した。  旅行には行かないが、日本各地には仕事で行っている。今更、珍しい場所なんてない。  結構遠かったので、バイクで行く事を諦め電車に乗ると、御形、ちゃんとグリーン席を購入していた。 「移動で疲れるのは論外だからね」  人が多い場所では、御形の爽やかな笑顔が炸裂する。他の人が見惚れる程、爽やかでかっこいいのに、どうして中身はかなりのブラックなのだろう。 「駅弁、食べるか?」  面倒見もいい。俺は首を振る。 「眠る」  昨日も遅くまで仕事をしていた。今日は早朝に起こされた。とにかく眠い。  御形が自分の上着を俺に掛けた。何やら、キャーなどと声が聞こえた。 「あの子かわいい!男の子かな、もしかして女の子なのかな?」  誰の事なのかさっぱり分からない。でも御形のスマイルが炸裂していたので、可愛い女の子が乗車していたのかもしれない。  爆睡していた。目覚めると、御形の肩に顔を乗せて眠ってしまっていたようだ。涎、垂らしてないよな?確かめながら体を起こすと、御形と目が合った。 「サンドイッチ食べるか?」  食べ物の名前を言われて、腹が鳴った。 「食べる」  窓の外は、一面の田んぼだった。遠くに山も見える。かなり眠っていたようだ。 「鞠の場所は、山の中の一軒宿なんだ。二日の宿泊を予約している」  サンドイッチがおいしい。パンをのどに詰まらせると、御形が茶のペットボトルを差し出した。 「チーズ嫌い」  サンドイッチからチーズを取り出すと、御形がつまんで自分の口に放り込んだ。 「過去を見る能力があるようだから、説明はしないけど、世の中には本当の霊もあるからな」  御形が、心配もしているようだ。偽でもプロの霊能力者なのだから、本物の霊にも遭遇している。無理はせず逃げる狡さも、もう覚えている。  御形に見せていない、他の能力もある。少なくとも、御形が一緒ならば、御形に怪我をさせない程度の配慮はあるつもりだ。 「知っている。無理しない」  まだ腹が鳴っていた。腹の音は、先ほどのは朝食で、今のは昼飯分なのかもしれない。 「駅弁は俺が食べてしまったしな。もうすぐ駅に到着するから、温かいもの食べよう」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加