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目が覚めると、俺はベッドに寝ていた。恭輔は家に帰ったようだ。御形は、床に寝ていた。
第三章 手鞠歌の少女
三連休には、鞠の場所に行く。何日も前から御形が、準備をしたのか?着替えは持ったか?などと騒ぎ出した。
旅行には行かないが、日本各地には仕事で行っている。今更、珍しい場所なんてない。
結構遠かったので、バイクで行く事を諦め電車に乗ると、御形、ちゃんとグリーン席を購入していた。
「移動で疲れるのは論外だからね」
人が多い場所では、御形の爽やかな笑顔が炸裂する。他の人が見惚れる程、爽やかでかっこいいのに、どうして中身はかなりのブラックなのだろう。
「駅弁、食べるか?」
面倒見もいい。俺は首を振る。
「眠る」
昨日も遅くまで仕事をしていた。今日は早朝に起こされた。とにかく眠い。
御形が自分の上着を俺に掛けた。何やら、キャーなどと声が聞こえた。
「あの子かわいい!男の子かな、もしかして女の子なのかな?」
誰の事なのかさっぱり分からない。でも御形のスマイルが炸裂していたので、可愛い女の子が乗車していたのかもしれない。
爆睡していた。目覚めると、御形の肩に顔を乗せて眠ってしまっていたようだ。涎、垂らしてないよな?確かめながら体を起こすと、御形と目が合った。
「サンドイッチ食べるか?」
食べ物の名前を言われて、腹が鳴った。
「食べる」
窓の外は、一面の田んぼだった。遠くに山も見える。かなり眠っていたようだ。
「鞠の場所は、山の中の一軒宿なんだ。二日の宿泊を予約している」
サンドイッチがおいしい。パンをのどに詰まらせると、御形が茶のペットボトルを差し出した。
「チーズ嫌い」
サンドイッチからチーズを取り出すと、御形がつまんで自分の口に放り込んだ。
「過去を見る能力があるようだから、説明はしないけど、世の中には本当の霊もあるからな」
御形が、心配もしているようだ。偽でもプロの霊能力者なのだから、本物の霊にも遭遇している。無理はせず逃げる狡さも、もう覚えている。
御形に見せていない、他の能力もある。少なくとも、御形が一緒ならば、御形に怪我をさせない程度の配慮はあるつもりだ。
「知っている。無理しない」
まだ腹が鳴っていた。腹の音は、先ほどのは朝食で、今のは昼飯分なのかもしれない。
「駅弁は俺が食べてしまったしな。もうすぐ駅に到着するから、温かいもの食べよう」
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