第1章

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カウントブラック 第一章 自称高校生詐欺師  自称高校生詐欺師、黒井 典史。名前は、親を呪うがごとくの読み方で、くろいてんし。 実際、親を呪った訳ではないが、この名前のせいで、ことごとく嫌な思いをしてきた。  それはさておき、何故、自称詐欺師なのかというと、霊能力者の家系というやつで、祖母と母は霊能力者、姉は占い師で生計を立てている。父は普通の会社員だが、俺の母、つまり妻を尊敬していて、更に崇拝している節がある。俺の名前に付いても、俺が生まれた時、母が『この子は天使よ』と叫んだとのことで、真面目な父は『てんし』という名前にしたと勘違いしたらしい。何の躊躇もなく俺を『てんし』という名前にしてしまった。  そして、俺に至っては、今まで女系しか引き継がなかった能力を、何故か持ってしまった。しかも、中途半端に受け継いでしまい、所により能力なし、所により誰よりも強く能力が出た。  時折、俺は、祖母と母の元で、アルバイトをする。故に、本来ならば自称霊能力者なのだが、俺自身は自称詐欺師の方がピッタリくると思っている。  賑やかな教室で、いつも浮いている存在。俺は、霊能者の家の者だと、周囲には知れ渡っているために、余り人と深く係ったことはない。先生でさえ、どこか遠まわしに俺を見ている。  世間の噂を全く気にしない、荒川が前の席から振り返って俺を見た。 「黒井。お姉さんの占いの予約を取ってくれないか?彼女が行きたいってさ」  姉の占いは、かなりの人気だ。でも、俺では、姉の占いの予約はできない。 「無理」  姉の占いの予約は、紹介制で、しかも、とても高額だった。 「姉は十八歳未満の予約を受け付けない」  しかも、トラブル回避のうえで、姉は子供の予約を受け付けない。 「そっか、それじゃあ、仕方ないよな」  荒川が鞄を持って、走ってゆく。廊下に彼女が待っていた。確か、彼女はバスケ部のマネージャーで、荒川はバスケ部だった。  俺は、これでも、成績は上位で、それなりに運動神経も良い。でも、どこの部も俺を受け入れてはくれなかった。やはり、霊能力者などと、誰も関わりたくないのだ。俺もかつては部に所属していたが、色々と、嫌がらせをされた挙句、先生にまで、問題を起こすから辞めてくれなどと言われてしまったのだ。
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