202人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
派手ではない蓮だが、何故か女の子に昔からよくもてた。優しいからかとも思うが、蓮曰く、女の子の気持ちが分からないと占いができないそうだ。
「それだけで?」
「その女の子が、食事は食べるのみで、包丁を持ったことがない、米炊いたことがない。洗い物したことがない。野菜、嫌い。だったもんで、父、激怒」
何か激怒した姿が浮かぶ。春日の父は、頑固親父的な雰囲気を醸し出しているが、繊細な料理と味覚を持っている。特に、野菜への愛情は半端ない。野菜嫌いはまずいだろう。
野菜の皮むきの次は、庭の掃除を行う。敷き地内が広いので、かなりの重労働だ。てきぱきと終わらせないと、学校に間に合わない。
息を切らせながら終了すると、シャワーを浴びる。
「では学校行ってきます」
ずっしりと重い弁当を持たされた。朝食と昼食の二食分あるようだ。
学校では、修業の疲れか、休み時間毎に爆睡していた。前の席の荒川が、授業が始まる前に都度起こしてくれた。御形はその後、俺には係らないが、時折、視線は感じた。俺も、その後、御形の家族は眠れているか?一穂は元気か?聞きたい気がしたが、聞かずにそのままになっていた。
農家レストラン春日に帰ると、縁側に恭輔が正座して待っていた。
「ただいまもどりました」
春日の父に、丁寧に頭を下げる。
「恭輔?」
恭輔がベソをかきながら、抱き着いてきた。
「この親父、俺の姿を見て、なめくじだって言った。水籠りさせた。畑仕事した」
支離滅裂だが、要するに、溶けかかった恭輔に修業をさせていたらしい。
「意外に効くみたいだね」
恭輔、実体化していた。
「早く処置するように。一時的なショックで最後の力を振り絞った状態なだけだ」
恭輔を見て驚かないだけで、春日の父は凄い。しかも、ちゃんと見抜いている。
鞄から灰を出すと、恭輔を実体化する。
「典史兄、俺帰るからね!」
用が済んだとばかりに、逃げるように恭輔が帰ろうとする。
「野菜、持ってゆけ」
野菜が大量に、風呂敷に包んで置いてあった。
「恭輔、お礼」
「ありがとうございます」
恭輔が消えるように去って行っても、驚かなかった。
「あれは、霊との子供だな…」
春日の父、悲しそうな目で恭輔を見ていた。
「前例はありますか?」
最初のコメントを投稿しよう!