第1章

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 御形に抱き寄せられ、二人で転がる。俺は、御形の腹の上に乗せられた。御形が温かい。間近で見ても、御形はかっこいい奴だ。整った顔に、優しい瞳。でも、俺は、男相手に、どうしたらいいかは分からない。 「大丈夫、もう寝込みは襲わないから」  黙っている俺に、御形はあれこれ気を使う。俺が、人付き合いが下手なだけだ。 「それと、俺、ちゃんと両親にカミングアウトしているから」  カミングアウト? 「黒井が好きでどうしょうもないと言ってある」  それでも、御形の両親、隣の部屋にしたのか? 「俺の了解もなく、そんな話をしたのか?」  俺は、御形の体の上から起き上がろうとし、御形に抱き戻された。 「片思いだとも言ってある。俺は、黒井を絶対に手放さないけどね」  変な奴に捕まってしまった。  ちょっと勉強したが、男同士のあれこれは、俺には出来そうにもない。少なくとも、御形相手だと、想像すらできない。  でも、キスは大丈夫だ。御形の手が、俺の首にまわり、引き寄せられる。もう一方の手が、服の中に入ってきた。御形の手が冷たくて俺の体がビクリと動くと、キスしながら御形が笑った。 「いい反応」 「手が冷たい!」  御形の手が、俺の背を這い回る。背ななんて、触られてもどうってことないはずなのに、すごく恥ずかしい。 「…もう、止め」  御形が起き上がると、俺は御形の膝に跨いで乗っているような恰好になった。急いで降りようとすると、両肩を抱きしめて押さえ込まれる。 「もう少しこのまま」  中心部に硬い感触がある。男だから仕方ないよな。嫌悪感よりも、申し訳なく思ってしまう。俺相手でなければ、御形、相手に不自由はしないのに。 「手でしようか?それ」  俺の視線の先を御形が目で追い、うなだれる。手でするくらいなら、俺にもできそうだ。 「ごめん。どうしょうもないな。好きな奴が前に居るだけで、興奮するな、やっぱり。自分で抜いてくるから、いいよ」  御形が部屋を出て行った。  御形の両親、居候の俺に、すごい部屋を用意していた。俺が、夜中まで仕事をしているので、遠慮しないで帰って来て欲しいと、庭から出入り出来るようにドアを付け足してあった。しかも、部屋が居間と寝室の二間に分かれていて、廊下に出なくても中で移動できるようになっていた。居間に、軽く洗面所も付いている。風呂は温泉を引いているので、真夜中でも入っていいよと言ってくれた。
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