第1章

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 いやね、別に頭おかしいとか思わないでほしいわけよ。ぶっちゃけ私も私に何が起こったのか、1週間経った今でも理解不能なのよ。  わかる?  例えば家の古ーい倉庫に興味が湧いて不気味な音たてて開いた扉の向こうから猪突猛進よろしくいきなり変な気持ち悪い感触の温もりに包まれたら、どうよ。  そんでもって温もりに包まれたまま「貴女が我が主でございますね!」と疑念もクソも抱かないような声音で耳元で言われたら、どうよ。  主ってなんだ。我がって誰だてめぇ。  とりあえずベリベリと剥がす勢いでその温もりから逃れたわけなのだけど。ここで私は思わぬ失態をしてしまったのだ。  何せその温もり、もとい前記した幽霊モドキは、一般の人には見えないという。例えそれが、代々この幽霊モドキを封印した水野家の人間でも。  つまりこの幽霊モドキ、倉庫に入ってきた人間ひとりひとりに先程の台詞を吐いては、自分が相手に見えるかどうかを実験していたようなんです。
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