第1章

11/14
前へ
/17ページ
次へ
なんとなく鬱々と暗かった村が、今日は何故か何処と無く明るい。童があちこちの家に入って行ってはなにかを叫んでいる。まるでお祭りの行列がすぐそこに来ているかのよう、な。 「―――柴刈りのおじいさん!」 「……応!」 向こうから一人の童が走ってくる。 「あのねあのね!もも……ももたろうが帰ってきた!」 「桃太郎がか!?」 こっちこっち、と童が吾の手を引っ張る。足がもつれる。 「早く!すぐそこまで来てるから!」 「―――おじいさん!?」 向こうから、桃太郎の声がした。童が吾の手を引っ張る。早く、早く、そこにいるじゃない。行こうよ!おじいさん、おじいさんですか?わたしは帰って来ましたよ!鬼も退治てきました! ほら、鬼の宝もこんなに。 これでこの村が飢えることはないでしょう―――? 【五】 「……じいさ……ん!おじいさん!」 がばっ、と思い切り起き上がった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加