第1章

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「嗚呼良かった。目が覚めましたね」 桃太郎がにこりと笑った。慣れ親しんだ我が家の風景に滑らかに溶け込むその笑顔。 「じいさん、目が覚めましたか」 「ばあさん……」 「桃太郎が無事に帰って来ましたよ。村の財政を救うために、財宝も奪ってきたって、」 「何故だ!!」 きゃあ、とばあさんが悲鳴を上げる。隣で桃太郎も目を見開いている。 「何故宝を奪ったのだ!」 「何故って、おじいさん。あの宝は近くの村の人々から奪った物ですよ?」 「それなら元の持ち主に返せば良かろう!」 「いや……御礼にと持たされてしまって……」 怒りで頭がいっぱいになる。どうして、何故、解らない、 「それに……」 吾にはもう、桃太郎が桃太郎には見えなかった。 「村も……これで飢えないでしょう?」 人の物を人から奪う。 「おじいさん、ずっと悩んでらしたじゃないですか。このままでは飢えてしまうって」 ―――さながら、鬼子のように。 「おじいさんの悩みも消えましたし、村の財政難もなくなりましたし、一石二鳥ですね」
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