第1章

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【六】 いつものように、山から村を見下ろしている。 「……」 桃太郎が鬼から奪ってきた宝のお陰で、村は豊かになった。鬼を退治たという事で謝礼も降りた。 しかし。 これで―――合ってたのか。 犠牲の上で成り立つ豊かさなど。 「おじいさーん!そろそろかえりましょう!」 「……応」 柴をたくさん背負っている桃太郎に頷く。あれ以来、桃太郎は荒れ事に手を出す訳ではなく、吾の仕事を手伝っている。 まるで、鬼退治に出る前の穏やかな日々のように。 けれども。 「おじいさん、どうかしました?」 「否。……村が、豊かになったな」 「えぇ、そうですね。珍しく鬼が役に立ちましたね」 「鬼は―――悪か」 「……?えぇ、勿論ですとも。だからわたしは鬼退治をしたのですよ」 「宝を奪い―――か」 「略奪した物を奪って何が悪いと言うのですか。きちんと元の持ち主から許可も貰っているのですよ」 「そうだったな」 桃太郎は人外だろう、と長は言った。 神か仏か――― 人外には、鬼もいると言うに。 何故、その可能性に気付かなかったのだろう。 「……帰るか」 「是!」 しかし吾には今の村の平和を壊す事は出来無かった。 穏やかに笑う桃太郎を誰もが信じてる中、吾だけが桃太郎に鬼の幻影を見てる。 【終】
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