第1章

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困り果てたように、坊が頭を掻く。みづら結いの髪型は、がっしりとした体型の坊にはあまり似合っていなかった。 「……おじいさん、この間やって来た旅人の話を聞きましたでしょう。鬼の横暴は日々酷くなる限り……」 「それは聞いた。しかし、何故」 「わたしはおじいさんとおばあさんに拾われて育ちました」 「……」 「その恩を返すには、世の為人の為に生きたいのです。その為にも、是非、わたしを鬼退治に行かせてください」 「……」 「止めたってわたしは行きます、おじいさん!」 「……世の為人の為というなら、仕方あるまい」 ぱっ、と坊の顔が明るくなる。がばりと手をつき、頭を下げる。 「有難う、おじいさん!必ずや鬼を討ち取ってきますが故!」 「世の為人の為だぞ、忘れるでない」 「はい!」 ばたばたと坊が外へと駆けて行く。その背中を眺めてから、後ろで座っているであろう媼に声をかける。 「ばあさんや、黍団子を作ってくれるか」 「はい、よろこんで」 後ろから軽い足音がした。今すぐに黍団子を作り始めるのだろう。 「……ばあさんや」 「はぁい?」 「坊の名前を付けてやらねばならぬな」 「そうですねぇ」
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