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呵呵と長が笑う。
「そりゃあ結構。しかし我のところにやって来たがを見ると、説得されたのであろう?」
「……はい。世の為人の為と言われては。そう坊に教えたは吾でありますが故」
「まぁ良かろう良かろう。あの坊は強いでな」
「そうで御座いましょうか」
「……月から、姫の迎えが来た時だ」
ざっ、と冷たい風が吹く。思いも寄らない冷たさに肩を竦める。まだ来ないはずの冬を感じさせられる風だった。
「皆が目を潰され……身動きも取れずにいた。しかし、あの坊は。あの坊だけは立ち上がり、弓を射てみせたのだ。……あれは人外かもしれぬのぅ」
「桃から産まれましたから」
「そうであったな。桃は仙人の食べ物じゃ。そうかそうか、おそらく人外であろうな」
「は……」
「それでも、この村の住人であるがな。……もう帰っても良い。風が冷たかろう、身体を労れ」
「……失礼致します」
長が門に入って行くのを見てから、踵を返す。いつの間にか長の肩が細くなっていた。なよ竹の姫が消えてから、長と北の方の心労は筆舌に尽くせぬと言う。
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