第1章

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「……よし」 やらねばならぬことがたくさんある。坊の準備を手伝わなくてはならないし、冬の支度もしなくてはならない。 坊の旅路がどれくらいかかるのかは解らない。鬼ヶ島まで半月程度で辿り着くから、最低でも一ヶ月はかかる。金はなんとか用意してやれるだろう。しかし鎧兜は、刀は。 考えることがたくさんだ。 「……なんとかせねばならぬな」 木枯らしがひゅうと吹いていった。 【四】 かちっ、かちっ、と坊―――桃太郎の背中で火打ち石が二回鳴る。 「それでは、行ってきます」 長から譲って頂いた鎧兜が朝日を反射する。きりりと引き締まった表情は、親の欲目を抜きにしても頼りがいのあるものだった。 「必ずや、戻って参れ」 「はい、長。この鎧兜と刀に誓いましょう」 「うむ。……して、父母からは」 ちらりと長が吾を見る。 「……世の中、人の為、だ」 「はい。必ず鬼を退治てきます」 「……ばあさんや」
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