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ばあさんは長から受け取った火打ち石をしっかりと握り締め、笑った。
「息災になさいね」
「はい、おばあさん。黍団子をありがとう御座います」
「えぇ」
「それでは、」
桃太郎がぐるりと吾らを見る。桃太郎の出立を知ってるのは長と吾とばあさんだけだった。
「行ってきます」
ひゅうひゅうといつもより早い木枯らしが吹く。
桃太郎は一度も振り返らずに歩み去った。
【五】
桃太郎が旅発って三ヶ月が経った。
「桃太郎はまだ帰って来ないのだろうか……」
切り株に腰掛け、村の家々を見下ろす。ちらほらと風花が散っている。
「……やはり今年の冬はみな飢えとるな……」
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