第1章

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「リオとしたい。」 「だからなんなんだよっ急に。」 理央が声を落として問いただすと、視線をそらしたマサが言いにくそうに口を開いた。 「俺今日、電車で痴漢にあった。」 「はぁ?」 「…ちょっと年上のおねーサンで、普通に可愛い系の人なのに、俺のナニ握ってたよ。スラックスの上から。」 「それで?」 「俺びっくりして、何も言えずにじっとしてたら、電車の揺れに合わせて扱いてきた。しかもわりと激しく。」 「誘われてたんだろ。」 「そうなのかな…。思わせぶりに見つめながら降りて行ったけど。…でも俺、あの人としたくない。」 「しなきゃいいんだから良かったじゃないか。」 「リオとしたい。」 「だからなんでそこに繋がるんだよ。」 「だって俺…リオのこと。」 (ドキ!) 「は~い! ホッケいっちょう~お待たせしました~。」 狭い居酒屋の中、肩を寄せるようにして話していた二人の間を焼きたてのホッケが通過してゆく。目の前に差し出されたホッケは身が厚く、いかにも美味そうな匂いを立ち上らせて会話の続きを邪魔していた。 「ビール、もう一杯頼む? 俺も飲むけど。」 と、理央がおかわりを注文するために店員を呼び止めようとすると。 「リオ。」 「ん?」 「今日、俺ん家泊まって。」 (ドキッ!!) 「俺…おまえにお持ち帰りされちゃうの?」 「そう。」 「食われちゃうの?」 「うん。」 (やばっ…。) リオの身体が興奮の兆しを見せ始めた。 酔っ払いの戯言。帰ったらヤツはきっとすぐに眠ってしまうに違いない。そう思っているのに、ずっと狙ってた男とやっと…。と、想像するだけで自身の強張りは増す一方だった。 ふたりは狭い二人がけのテーブルに並んで座っている。テーブルの向こう側は道路なので半透明のビニールシートが屋根から釣り下がっていた。 マサは不意にリオの手を取り自分のほうへと導いた。おとなしく従うと、そこにはもうはちきれそうなナニが激しく自己主張している。 「りおぉ。」 どうにかしてくれ。とマサが甘えた声をだした。 (マジ…かよ…。) 「バカ…。どっか…トイレ、行こうぜ。」 「やだよぉ。ちゃんとしたいよぉ。」 マサの手を引こうとすると嫌がって動こうとしない。 「あ…。」 そのまま手を握り締められて、繋いだ手をテーブルの下へと隠される。 「マサ…。」
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