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『何をしようとしてるの』
手首を掴まれた。暖かい手。
「何だ、餓鬼には関係ない。さっさとその手を離せ」
『あんたには聞いてない』
相手の男を睨みで黙らせて視線を俺に合わせる。幼さの残る瞳で俺を見た。
『君はこれを望んでいるの』
真っ直ぐな瞳で聞いてくる。望んでいるわけない、今だって逃げたい、誰かに止めてほしい。
『君が今思ってる望みをその口で言ってごらん。その望みを私が叶えてあげる』
「この餓鬼が、さっきから聞いてれば何言ってんだ」
『だからあんたには聞いてない。黙ってろ、おっさん』
「あんだと!」
男が彼女に向かって腕を振り上げる。俺は咄嗟に彼女を引き寄せた。背を向けてじっと待ったが、何の衝撃もこなかった。恐る恐る後ろを見ると、黒服の男が拳をを受け止めていた。
「若に手を上げたな。覚悟はできてるんだな」
『寛、手加減はちゃんとしてね』
「若のお願いでもこればかりは無理です」
『まったく…さて』
彼女は顔を上げてまた俺を見る。まだ頭が混乱してる。何となく彼女正体が分かった気がするけど、彼女ならきっと俺をここから出してくれる。
「お、俺」
『うん』
「やめ、たい」
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