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『分かった。じゃあ行こう』
掴んだ手をそのままに彼女はどこかに向かって歩く。俺は引かれるままついていく。
『寛、その人よろしく』
「了解です」
『で、君の名前は』
「久島、進です」
『では進。君は私の正体を薄々気付いているんじゃないかな』
「あ、はい、薄々は」
『なら話は早い』
何処に向かってるのかと周りを見ると、離れた場所にあった黒塗りの車が目についた。あと数mという距離で運転席から黒服の男が降りて後部座席を開けた。
『乗って』
彼女の言う通り乗ると続けて彼女も乗った。
『私は霧ヶ峰 彰(キリガミネ アキラ)。さっきのが寛(ヒロシ)、運転手は雨竜(ウリュウ)』
「どうも」
そう運転手の雨竜さんがミラー越しに目を合わせて言った。
『私達は霧ヶ峰組っていう任侠者。暴力団とは違う、本来の意味での任侠者』
「はぁ…」
『で、私はその若頭。進にはうちに入って働いてもらうから』
「働くって」
『あ、取り立てって思った?』
彼女…彰さんはずいっと顔を近づけて笑った。
『違うよ。うちが経営するホストクラブでってこと』
ホストクラブと聞いて少しほっとした。
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