第1章

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 黒い髪に夕焼けのような朱色の瞳をした高等部の先輩は、ピアノ椅子に腰かけてアタシに視線をむけていた。  その視線は刺すように鋭くて、凍るように冷たい。 「お前が梅野ウツロだな」  どうしてアタシの名前を知っているのか、までは考え付かないけれど、首を縦に振ると、先輩は椅子から立ち上がる。 「もう、二度と歌うな」  警告のような、脅されているような、切り捨てるような響きを持ったその言葉。  どうしてこの人に言われないといけないのか、今まで歌っていたことを咎められたことは一度もないのに、 「どうして?」  気が付くと、声に出していた。 「もう十分なハズだ」 「……まだ足りないの」  先輩から視線を外す、歌えば妹に会えるのだから、もう少し思い出に浸りたい、たくさん歌ってもまだ足りない、毎日歌い続けなければいけないのに。 「そうか」  先輩はため息をついてから、アタシの横を通りすぎて音楽室から出ていく。
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