第1章

6/11
前へ
/11ページ
次へ
  *  澄みきった空と、澱みきった悪意が見えた。  美しくて、醜くて、花のように清純で、ぐちゃぐちゃした肉塊で、慈愛に満ちていて、拘束されていて、真っ直ぐに見えて、ぐねぐねと曲がりくねっていて……。  何度その笑みに甘えたか。/何度その毒で殺されたか。  綺麗にわかれている/複雑に絡み合っている  幾重にも折り重なった一番上の表面。  幾重にもして隠れていた一番奥の部分。  善?  悪?  混沌だ。  溶け合うように美しく、分離ばかりをして醜く。  呻いて目を覚ます。  白い天井。  きっと良い夢で、あるいは悪い夢のどちらかだった。  不安になって、妹を抱き寄せる。 「どうしたの?」 「……なんでもない」  心配そうな表情だけれど、それさえ愛しいと思えた。  そうだ、今日は病院に行く日だった。  もう少し眠りたいけれど、送迎してくれる人が来るから、それまでに準備をしないと。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加