第1章

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それは、なんの予兆もなく訪れ、私は障害者となった。 25年間、何不自由無くワガママ言いたい放題で生きてきた。 そして、26歳になって1ヶ月が経とうとする頃。 一瞬にして人生が変わった。 そのとき目に映るモノは、クリーム色の天井だった。 もう二度と、見たくない。 平凡で、時には幸せを感じ、時には悲しみを感じ、怒り、悩み、生きてきた。 それが当たり前なんだと勘違いして。 暑い夏の夜、そっと冷たい風が吹いた。 その風と同時に、誰かに聞いた言い伝えを思い出した。 「あなたは、○歳までしか生きられません。それに、○歳で何かを失います。 それでも、あなたのご両親から授かった生を受け、この世に産まれたいですか?」 「はい。」 そう答えた者だけが、この世に生を受けられる。 親を選んで。 親は子を選んで。 本当かどうかは分からない。 例え、あと1日の余命だと宣告されても? いつ、何を失う? なぜ“生きられません”なの? なぜ“生きられます”じゃないの? 生きる・生きたい・生かされる・生きたくない。 同じ“生”と言う漢字でも、どうしてここまで意味合いが違うのか。 そして、私が失ったもの。 それは、自由な身体だった。 あの言い伝えを信じていたのもあり、また、改めて確信した。 例えこの病気になると分かっていても、私はきっと、「はい。」と答えてた。 だが、人生とは、生きるとは、とても勇気が必要で、1人では生きていけない。 常に誰かと関わっていたい生き物なんだ。 病気が発症して、心の底.から笑うことができず、ただただ、絶望だった。 絶望だったのは私だけではなく、全く罪の無い家族までをも巻き込んだ。 中身の無い笑顔を振る舞う私に、同情なんていらない。 目から勝手に出てくる温かい液体は、頬を伝わず耳に流れる。 寝たふりをしていると、看護師さんが拭いてくれる。 その看護師さんの行動にまた、涙する。 何度も脳裏に“死”が過ぎると同時に、生かされている感情になった。 あんな未来が私を待っているなんて、なんの予想もしていなかったし、誰も教えてくれなかった。
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