第1章

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私には、抱きしめることしかできないけど・・・。 だって、まだまだ生きたがってる。 生き物は絶対いつか死ぬんだ。 そのときは自然に心臓が止まるよ。 だから、それまで待ってみない? 小学生の高学年にもなると、親の手伝いがしたくなる。 母「これは簡単だから、やってみる?」 私「うん!!」 マジでドジ。 早速中指を切ってしまった。 と同時に、「あら!」と言い、母は玄関から出て行った。 え・・・放置。 中指からは血が流れ、緑色のキュウリが赤く染まった。 とりあえず、水道で血を流し大急処置。 母がアロエを千切って帰ってきた。 母「痛かったね、もう大丈夫よ!」 そう言いながら、大きな絆創膏を貼ってくれた。 母「テレビ見ながら待っててね、すぐご飯できるから☆」 私「うん・・キュウリ・・ごめんなさい・・。」 母「何言ってんの?キュウリなんかどうでもいいでしょ。問題は傷よ! まぁ、傷ぐらいしてみなきゃ世の中生きていけないけどね。」 やっぱ強いな。 今日は広美ちゃん家に寄らず真っ直ぐ帰った。共働きのため私は鍵っ子。 雨が降ってきたなぁ。洗濯物入れるぐらいなら私にもできるぞ? あ、お母さん傘持って行ったのかなぁ? 不安になった私は50円と傘を持って、駄菓子屋に行った。 10円のえびせんを買い、母が自転車で登場するのを待っていた。 森のくまさんを1人で輪唱しながらね。 今、何時だろう、もうここを通ってもいい時間なのにな。 暗くなりだし、もしかして違う道から帰ったのかもしれないと思い、家に向かった。 が、母はまだ帰っていない。父もまだ帰っていない。 当然、思春期の兄と姉もまだ帰っていない。 もう6時になるよ・・いつもは狭く感じる家も・・今は無駄に広く感じる。 テレビを見る気にもならず、不安になり広美ちゃんに電話をした。 「え?遅いね!?家に来て一緒に待つ?おいでよ?」 優しい言葉に少し救われ、「もう少し待ってみる、ありがとう。」と言って電話を切った。 いつもはしない宿題をしよう、そしたら帰ってくるかも! いつも宿題をしないから、ミンナに嫌われたのかなぁ。 〔可奈は今1人で宿題しています〕っていつも流れる6時のお知らせで言ってくれないかなぁ。 「「ガチャン」」  玄関に走ると、母が笑顔でただいまと言った。 私「お母さん!!」 母「なに?どうしたの?そんなに急いで。」 私「遅いよ??!!雨降ってたでしょ?」
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