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隣に寝ていたはずの女が、そっと出ていこうとする音だった。
聞くと、お腹がすいたからコンビニにバターを買いに行くと言う。
なぜバター?と、寝起きの頭で不思議に思ったが、寝る前に男が買ってきて、食べきれなかったやきいもと、その時女がほしがっていたがちょうど切れていたバターを思い当たり
コンビニには女の好きな肉まんも、
シーチキンのおにぎりもあるのに、
と、なぜか安心して、一緒に行くよ、と言った。
すると女は「いい、すぐそこだから。寒いから寝てて」と言い放ち、バタンとドアを閉めて行ってしまった。
男は再び毛布にくるまり、うとうとする。
女がコンビニから帰ってきたら一緒にやきいもを食べよう、
そう思って、そんなに寝る気はなかった。
だからその夢も、とても短いものだった。
女がいる。男のマンションを出てすぐ携帯をだし、発信ボタンを躊躇なく押す。発信先は最近別れた腐れ縁の元彼だ…
どうしてだ。もうやめると言っていたのに。
俺の元へきてくれると言っていたのに。
と、そこまで見てドアの音で目が覚める。
帰ってきた。
だがなぜか夢から現実に戻れず、激しい動悸と泣きだしてしまいそうな気持ちが押さえられない。
堪らず寝たふりをする。
女はかたかたと何か作業をしている。
静かな夜。
レンジで何かをあたためる、音。
ついもぞもぞと動くと、「ごめんね、起こして」とマグカップを持ってきて、ベッドわきに置き、女が隣にもぐりこんできた。
マグカップのなかみは、あたたかな牛乳にはちみつを入れたものだった。
やわらかなあじ。
雑誌をぱらぱらとめくりながら、シャツ一枚で、どっさりとバターをつけながら巨大なやきいもをほうばる女。
ふとるぞ、気にしているくせに。
男は、ぎゅうとそいつを抱きしめた。
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