2014年11月

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11月16日(日)  文芸部の先輩である柳沼さんの提案を受けて、今日から私も日記をつけることにした。とにかく毎日文章を書く癖をつけたほうがいいとのことで、柳沼先輩は中学二年生の頃から続けているらしい。それを聞いた私はなるほどと思い、そして少しほっとした。私と先輩との間にある実力の差には、それ相応の理由があったというわけだ。  柳沼先輩が言うには、 「その日の出来事をそのまま書くこと。(物語にしようとか、面白くしようとか考えない)」 「出来事に対して自分がどう思ったかを正直に書くこと」 「自分だけにわかる表現を使わないこと」 が重要らしい。  私はこの日記を誰かに見せるわけではないけれど、二番目の事項はいざとなると抵抗がある気がする。もしこれからの私が誰かを好きになったり、あるいは嫌いになったりしたときも、赤裸々にそれを書き留めなくてはいけないのだろうか。確かにここに私以外の読者はいないけれど、唯一の読者である私に私の本心を見せるのって、なんだかこっぱずかしいことのように思えてしまう。  でも、書く。  今日は学校で文芸部の批評会があった。文化祭で三年生が引退してから初めて行われる批評会で、今回作品を発表したのは二年生から柳沼先輩、なっちゃん先輩、彩先輩の三人と、一年生は私だけだった。みずほは結局締切に間に合わなかった。恋愛小説を書くと言っていたから楽しみにしていたのに。  先輩の作品に私なんかが意見するのはどうしてもはばかられたので基本的には先輩達の話を聞いているだけだったけど、とても有意義な時間だったと思う。 「客観的描写はうまいんだけど、それが読者に感情移入をさせられるレベルまで洗練できるともっとよくなると思う」 と、柳沼先輩は上手に褒めてくれたけど、私にそんな頭のいいことはできそうにありません。頑張ります。  彩先輩の小説にはキュンキュンしてしまった。先輩は否定していたけれど、あれは絶対実話だと思う。はたして私でも、男子の背中に人差し指で文字が書けるだろうか。  ……ムリ。  そもそも男子に触れられないし、触ったら絶対引かれると思う。  やっぱり、かわいい人は得をしている。
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