2014年11月

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11月17日(月)  今日は3・4時間目に選択美術があったので楽しかった。先週よりもイチョウの葉がずいぶん黄色くなっていたので私は上から黄色の絵の具を薄く塗り重ねてみたのだが、いまいち色が変わらなかった。美術室に戻ってそのことを先生に報告してみると、ビビらず思いきって原色を重ねてみなさい、と言われた。確かに私はビビっていたな、と思う。一度塗った色に違う色を塗り重ねるという行為、素人には勇気がいりますよ、先生。  そういえば、小山くん。やっぱり彼は絵が上手だ。彼の描いたイチョウの木は黄色と緑と、よく見ると赤色がほんのりと混ざっていて、秋らしい暖かみがあった。どこでそういうセンスをもらってくるのだろう。  描いてるときにみずほが彼の絵がうますぎる件に触れると、小山くんは「遠くからだからそう見えるだけだよ」と言った。そこですぐさま筆を投げ捨て彼のキャンバスに近づけるところが、みずほと私の決定的な違いだと思う。  手袋をみずほに奪われた小山くんが「手が震える」と言いながら描いているのは少しかわいかったけど、私はそれ以上に彼の手袋がおっきくてモコモコしていたことがおかしかった。「これで私も絵がうまくなる」とそれをつけ、旧校舎の入口に妖怪みたいな猫を描き出したみずほは、やはりいい性格をしている。  来週は休日だから、再来週が油絵をやる最後の授業になると先生は言っていた。その次からは彫刻刀を使った授業になるらしい。  少し、残念だ。
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