雨に打たれて這いつくばれば

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◇──── ◆── 《外待雨(ほまちあめ)》  そんな私でも。 愛する人はいたの。  八歳上のその人は。 私以上に孤独で。 その冷めた姿態が気高くて。 孤高に輝いていたの。  人を容易に寄せ付けない。 けれど一度、羽の下に受け容れた相手だけは、見放さない。 最後まで気に掛けてくれる。  言葉よりも何よりも。 気高い精神と温もりで、私を支えてくれたわ。 不器用な魂を抱えた人だった。  上手く呼吸が出来ず、笑う方法さえ忘れていた私に。 思わず、幸せすぎて笑うこと。 微笑みながらも涙が出ること。 愛おしいと、強く思う感情も。 哀しみも苦しみも。 焦げるような嫉妬も、醜ささえも。 全てを始めから教えてくれたの。  その人は、私を創ったの。 私の全てだった。  ──私だけの、“美しい神様”  私は、のめり込んだわ。 周りの誰よりもその人だけを求めた。 自分自身よりも、欲しいと思えた。
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