雨に打たれて這いつくばれば

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 おかしいでしょう? こんなにプライドの高い私が、自分自身を要らないだなんて。  後にも先にも、こんな愛し方をしたことはないわ。  結局。 その人は、魂だけになったの。 私の腕の中で、命を消していったわ。 胸に穴が開いたことだけは確かよ。 信じるだけでも、二十六年、掛かったもの。  一生、囚われると思ったわ。 案の定、まだ私を囚えている。  あの人は私で、私はあの人なの。 “神様”がいなくなったら、私の世界は滅びるわ。  認める訳には、いかなかったの。 それで良かったと思っているわ。  結局あの人は、自分自身を遣い切ってまで。 “生と死とはどんなものか” 私に深く、刻み込んだの。  まさに、神様でしょう? 忘れられる人は、いるのかしら。 私には、無理だわ。  私は、思い出から離れられない。  ──これが。 私を形成した、最初の十年間よ。
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