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《 肘かさ雨(ひじかさあめ)》
私は、私だけの神様の不在を受け容れられなくて、もがいていたの。
少しずつ、理解を示してくれる人間は現れたわ。その存在は確かに、私の心に風を入れた。
おままごとのようなお付き合いの相手は、何かに突出した人物など。
私は最早、何かに突き抜けた人しか相手に出来なくなっていたの。
十六歳の始め。
私は三十歳以上離れた男性と、親しくなり始めたわ。
年齢不詳の人物だった。
その男は、私と文通を重ねてゆき、私を支えてくれたの。
ある日、正面から私を見据えて、男はこう言ったわ。
『“十六歳の気配”じゃない』
私の心を掴むには、的確な言葉だった。
その男との文通は続いたの。
いつでも淡く薄い桜色の封書が、その男からの便り。
後年再会した時、男は言ったわ。
『俺を見付けた時にだけ、笑う君の顔が、いつも支えだったんだ』
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