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「それじゃ……居たらいいなと思うけれど、見つかることは望まない」
「それだ。それならいい」
「うん」
小由利は嬉しそうに微笑んだ。
「あのさ、小由利ってもしかして、サンタクロースも信じてる?」
「え? どうして分かったの?」
「あ……」
「ん?」
「咲ちゃん。ベスの散歩」
「どれ?」
目を凝らす。
「おお! ここから見ると、まるで人間がゴミのようだ!」
「誰がゴミだ!」
「お前が」
バシッ
「……痛いんだってば」
「あたしの手だって痛い」
「ジレンマだな」
「それより小由利、どうしたの? こんな時間まで外に居て」
「うん……その、ちょっと用事があって」
「用事? ふたりで、どっか行ってたの?」
咲が、怪しい奴でも見るような視線をオレによこしてきた。
「アイコンタクトか? 何々? 必殺の木人権を披露したい、ですと?」
「出来るか!」
「オレは出来る」
「ひとりでやってなさいよ」
「ふんっ! へあっ! あとうっ! ぬるはっ!」
咲は小由利に向き直った。
「ふたりして、どこ行ってたの? あたしは仲間はずれって訳?」
「おい、オレを無視しないでくれ」
「……本屋さんに行ってただけだよ」
「こんな時間まで?」
「おーい」
「うっさいな」
こちらを見てくれたので、取り敢えず木人権はお休み。
「本屋だろ? じっくりと選んだだけだよ。な?」
オレは小由利に顔を向けた。
小由利はこくこくと何度も頷いた。
「ふうん……まっ、いいけどね」
「それより咲ちゃん。今日は、私の番……」
小由利は、ベスの頭を撫でながらそう言った。ベスは、気持ちよさそうな顔をしている。
「え? や、ははは……」
「お前に乾いた笑いは似合わないぞ」
「うっさいなあ……」
そこで咲は、拝むように手を合わせた。前にも見たことがるポーズだ。
「ごめんごめん。だってさ、小由利ったら遅いんだもん。ベスも、待ちくたびれるかなあ……て思ってさ」
「次の咲ちゃんの番gは、私だからね」
「分かってるって」
咲がにっかりと笑い、小由利も微笑んだ。
「何で、ふたり一緒に散歩に行かないんだ? そうすりゃ、順番とか関係ないじゃん」
すると咲は、偉そうに腕を組んだ。
「あたし達、分けられるものは、なるべく分けられるようにしてるんだ」
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