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正司は美しい、端正な顔立ちもそうだが、スマートでお洒落ないでたちも、カフェラテを飲む仕草も、ただ歩くその姿でさえも、人目を惹かずにはいられない。そして優しい瞳でうっとりと微笑まれてしまえばもう、会話などいらなくなってしまうのだ。
「しいて言えば…」
カフェラテをカウンターに置き、肘をついて組んだ手の甲に顎を乗せた正司がアキを流し見る。
「なに!?」
「僕は元々無口な人間で、なのにどうしてかアキの前では饒舌になってしまうんだよ」
「…俺が…特別ってこと?」
「そういうこと」
パチン。と格好の良いウインクをされ、アキは盛大に顔を赤らめた。
「ぁ…ん…」
家に帰り着くのが待ちきれなかったように、玄関を入ったところでどちらからともなくキスをした。
立ったまま背中に回される力強い腕。熱い吐息。
「しょ…うじ…さ…ぁん」
首筋にいくつものキスを落とされ、身体の芯が熱くなってくる。
「アキ…」
気がつけば上着はとうに脱がされていて、シャツのボタンもすべて外されていた。
「あ…」
いつも余裕たっぷりの正司がこんなところで仕掛けてくることなど滅多になく、アキは羞恥に身をよじった。
「アキ…?」
「こんな…恥ずかしい…」
「煽ってるようにも…見えるけど?」
「そんなっ…あぁっ」
よじった上体からシャツをするりと落とし、正司は突き出された胸の先端を口に含む。
舌先で転がされるように愛撫され、アキは思わず声を上げた。
「あぁっ…」
「気分じゃない?」
「もう…意地悪っ」
正司がこんな風にアキを追い詰めるときは、決まって嫉妬がらみだ。今朝方昔の男の夢を見たというアキに自覚なく意地悪をしている。いつも完璧なまでにソツのない正司が、アキのこととなると途端にただの一人の男になってしまう。アキにはそれがとても愛しいことのように思えた。
「じゃあ…」
シュルっと太目のベルトを引き抜き、ジーンズのボタンに手を掛ける。
「えっ…ここで?」
玄関のシューズクロークに背中をあずけ、その冷たさに一瞬アキの身体が震える。
「しょうじさっ」
「大丈夫。じっとしてて」
細身のジーンズは膝のところでたぐまり、小さなビキニの下着も正司の手によってゆっくりと下ろされていた。
「寒いだろう。いま熱くしてあげるから…」
触られて途端に熱くなる身体。
「あっ」
「どうしたんだい?」
「…なんでもない」
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