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けれども、暫く放置されたお陰で精神状態は安定していったわ。
睡眠と食事と与えられた衣服。私は彼に訊ねたの。
「どうして、ここまでしてくれるんですか?」
「同じだから。僕だって彼女が拐われたらそうするよ。きっと」
彼は木の実をくれた。私はナッツの作り方を彼に教えたの。なにもできない私だけどなにか恩返しがしたかったから。彼はとても気に入ってくれたわ。早速、彼女にも食べさせると言って出て行った。
ゆっくりとだけど周囲の対応に私は平常心を取り戻していった。
そして、やっと。女王に会えることになったの。緊張したわ。女王に会うことなんてないんだもの。
「カイを返してください。カイに会いたいんです」
取り乱さないようになんて無理だった。私はありったけの言葉で訴えたの。
「落ちて話を整理しましょう。貴女は混乱しているわ」
「え?」
女王の鋭く落ち着いた声に私は我に返ったの。ゆっくりと話を噛み砕いて、ゆっくりと話を聞いて私は安心したわ。
私は、とんでもない勘違いをしていたの。王子をカイだと思い込んでいたのだから。
ずっと追い詰められていたんだわ。
それでも二人は優しかった。最後にソリをもらったわ。私の国ではソリを馬車とも呼んでいる。これでカイを見付けることができる。移動も早くなったわ。
お二人が幸せになれますように。
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