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第3章 トラフィック・ジャム #2
「こんな時間にオペですか?」
「オペが真夜中だろうが真昼だろうが、
あなたには関係のないことよ、
運転手さん。
中央
自動車道を走った経験はある?」
「山中湖へ遊びに行ったり、
桐谷常務のゴルフとか、
まあ、
人並みには」
「だったらつべこべ言わずに前を向いて運転しなさい」
秘書はそう言い放ち、
ぴたりと閉じた両膝の上でコンパクトを開いた。
まるで鏡の中に
部屋を借りて住んでいるみたいに、
やけにくつろいだ表情が膝に向けられた。
暇さえあれ
ばメイクを直したり鏡を見ていたりする秘書にとって、
鏡の外の世界は銃弾飛び交う戦場
なのだろうか、
と圭一はほとんどあきれながら考えた。
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