第3章 トラフィック・ジャム #2

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 苛立つ圭一の隣に、 助手席に若い女を乗せたセルシオが並んだ。 ハンドルを握っている のは五十後半から六十半ばと思しき痩身の男だった。 胸元を大きく開けたシャツにいかに も着心地の良さそうなジャケットを合わせており、 豊かな頭髪を軽く後ろに流し、 いかに も涼しげな笑顔を女に向けていた。 カットソーの似合う首の長い女は、 服装やメイクは一 見地味だが、 胸元は運転席の男に贈られたに違いない、 派手なダイヤのネックレスで飾ら れていた。 ふたりは親子ほど年が離れているものの、 親子にはとても見えなかった。 とき にはゴルフの誘いを断わってまでサーフィンに出かけていた桐谷常務の面影が男の横顔に あった。
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