テーブルの下

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「ビール大ジョッキで4つねー」 「里奈(りな)、あんた何にする?」 弥生が聞いてきた。 「私も生でいい」 今日は同期の忘年会。 といってもまだ12月始めなんだけど、年末進行で本格的に忙しくなる前に会ってしまおうって話なんだ。 私たちは入社3年目。 テーブルの向こうでみんなのオーダーをまとめている葛城祥(しょう)とは、付き合ってほぼ半年になる。 私も彼も、人事部に所属している。 新人のころ人事とか経理に配属される事は、わが社では出世コースと言われた。 社の全体を見られるからとかそんな理由らしいんだけど、なんかあまり根拠がないような気がする。 私たちのことは、社内では誰も知らない。 というか知られないようにしているんだ。 同じ部内で個人的関係が出来たら、どちらかが移動させられるわよ、って入社時に先輩に聞かされたから。 祥も私も、今の仕事はそこそこ気に入っていて、がんばりたいねってお互いに言っているし。
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