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驚いて目を見開くと、チョコレート色した彼の瞳も同じように見開かれて。
私は瞬間、彼に釘づけになった。
停車するためにガタンと揺れた車体に、呆けていた私は不意をつかれて。
ブーツのヒールがフラリと揺れた。
踏ん張ろうとしたけれど、それはもう後の祭りで。
重力に逆らえず、私は目の前の彼の胸に……
鼻からつっ込んだ。
「ブッ……」
無様に鼻を打ちつけた私は、情けない声まで上げて。
もう、恥ずかしくて顔も上げられなかった。
「大丈夫?」
低く深みのある低音が、優しく響いて。
大きくて温かな手が私の腕を支えてくれていた。
そっと顔を上げると、チョコレート色の瞳が優しく細められていて。
ジンジンと痛む私の鼻先を、ふわりと甘い香りが掠めた。
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