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一瞬で囚われたその瞳と。
甘い香りが私を魅了してーーー。
「ごめん、ここで降りるんだ」
彼の困ったような声に、私はずっと彼に寄りかかるようにして立っていたことに気づく。
慌てて彼から離れると、グッと足に力を込めた。
「ごめんなさい……っ」
頭を下げて、恥ずかしさのあまりそのまま俯いていると。
「これ、貸してあげる」
温かな手が私の手に触れたかと思うと、単行本が握らされていた。
「え……っ」
慌てて顔を上げたけど、彼はもう電車を降りてホームに立っていた。
そうして振り向いてこっちを見た彼が。
「また明日」
優しく笑ってそう言った。
返事を返そうとしたその時、無情にも扉が私と彼を遮断した。
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