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自宅マンションの駐車場に車を停め、エントランスへと向かう。強い北風が暗闇を吹き抜ける。寒さに震え、俺は片手でコートの襟を合わせた。
その時だ。後方で何かが微かな音を立てた。おおかた迷い猫の類だろう。俺は構うことなくエントランスへと続くアーチを潜った。
「うう……」
どうやら猫ではなかったらしい。今度ははっきりと、人の呻き声が聞こえた。声のした方へ顔を向けると、マンションのゴミ捨て場と隣地との境に立つフェンスの間に、誰かが蹲っている。
「……まさか」
ハッと息を飲んだ。あの時と全く同じだ。およそ2年前のあの日、ソラを拾った夜。
あの日も、ソラはあの場所にいて、誰かに拾われるのを待っていた。
「……ソラなのか」
傍まで行き、呼びかけてみる。しかし、応答はない。
ベージュのパンツに白いコットンのシャツ。この寒空の下、こんな薄着でうろつくなんて、酒にでも酔っているのか。いくら体を揺さ振っても、膝に顔を埋めたまま動かない。
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