85人が本棚に入れています
本棚に追加
放っておくこともできた。救急車でも呼んで、男はそのままに立ち去ることも。
しかし俺は、男を抱き上げエレベーターのボタンを押した。一つずつ昇っていく赤い階数表示を見上げながら、再びため息をつく。
あんなに苦しい想いをしたのに、また、あの時と同じことをしようとしている。
ほんの一週間。決して消し去ることのできないソラとの愛しい記憶が、未だに俺を苦しめる。
俺は、自分の胸に体を預ける男の顔を再び見下ろした。
男はどこか、ソラに似ていた。
最初のコメントを投稿しよう!